GEN vs FLY
GAME1
FLYは長らく見られなかったミッドのセラフィーンと、GENはPeyzがジンクスをピックした。
11分のグラブファイトでは、FLYはランブルのRにより一時撤退を強いられる。しかし、Chovyが無理をして詰める瞬間をBusioが見逃さなかった。アリスターがフラッシュで突っ込み、キルを取ることに成功。さらに追加で2キルを獲得し、初めてのチームファイトでFLYが勝利を収めた。
ここから有利がさらに広がる。13分にはセラフィーンを狙いに前に出過ぎたレオナが落とされ、続いて合流しようとしたスカーナーもシン・ジャオのアルティメットに捕まり、FLYが再び有利を得る。その後のファイトでは多少GENが返すものの、オブジェクト面ではFLYの圧勝といえる内容。なんとキャッチの末、バロンまで獲得してしまった。
しかしその後、GENのサイドプッシュを許してしまったことで、FLYのバロンパワープレイのゴールド差が一気にマイナス1000ゴールドまで落ち込むという事態が発生。やはりNAというべきか。しかし、FLYは依然として約3000ゴールドのグローバルゴールドリードを維持していた。
30分手前、ソウルのかかったドレイクファイト前に、FLYはアーリを捕まえきれず多くのRを失ってしまう。しかし、Bwipoのガリオが前に出ておとりになることで、ドレイクラッシュ。ドラゴンソウルを確保しきった。そして硬さを活かしながら、レオナ、ジンクス、スカーナーを全て倒し、チームファイトに大勝利。そのままミッドを押し切り、FLYが1セット目を勝利で飾った。この勝利は、2018年のWorldsでAFsがC9に敗北して以来、2191日ぶりのLCSのBo5セット勝利だ。
誰も予想しえなかった展開。FLYが1セット目をきれいに先取した。FLYはダイブメタへのカウンターとして、従来のトップガリオに加え、ミッドのセラフィーンという妙手を見せ、これが見事に的中した。さらに、ミクロで優れているGENを集団戦で多く上回ったのも、驚くべき点だ。HLE戦で見せたものが無駄ではなかったことを証明するかのように、ゲーム全体で大きな揺らぎもなく連続してチームファイトに勝利した。
一方でGENは、どちらがNAのチームで、どちらがLCKのチームなのか見分けがつかないほど期待外れのパフォーマンスを見せ、1セット目からFLYにネクサスを譲り渡し、面目を失った。試合開始からジャングルインベイドを受け、その後もFLYにキルを献上し続け、チームファイトでの敗北を繰り返すことで、ダメージが急速に積み重なったことが大きな敗因となった。
GENの最大の敗因を挙げるならば、まずはバンピックだろう。一見すると安定したピックを全て取っているように見えるが、実際にはトップとミッドの両方がAPで、ガリオ一人に完全にカウンターされる危険が高かった。そのうえ、ジャングラーがタンクのスカーナーであったため、序盤からトップサイドの主導権がほとんどなかった。さらに、相手がガリオ、シン・ジャオ、アリスターという突進に特化した構成でありながら、ガリオとアリスターのタンク能力が高いため、ジンクスが前線からダメージを与える選択肢も、適切なポジショニングを取ることも難しかった。ボットのコンビもアッシュとアリスターで、ジンクスとレオナ相手に耐えるのが難しいなど、ゲーム内での展開が非常に難しい構成だったと言える。
また、ゲーム内でもFLYを軽視しすぎていた。序盤のインベイドに安易に許したことでスカーナーがそのまま腐ってしまったり、無謀に突進したアーリを救おうとして次々と飛び出し、さほど重要でもないリフトヘラルドのためにトリプルキルを献上してしまうなど、自分たちの有利な点を自ら壊すようなミスが目立った。つまり、ピックバンでもゲーム内でも、勝つ準備が全くできていなかった。
GAME2
1セットで屈辱的な敗北を喫したGENはセラフィンをBANし、アッシュを1stで抑える。さらに、Canyonはシグネチャーピックであるニダリーを選び、続いて前のセットで活躍したシンジャオをBANした。そして、FLYはHLE戦で勝利を収めた秘密兵器であるヌヌ&ウィルンプを選択。これに対してGENは5ピック目にカサディンという強力なピックを出してきた。
序盤からGENの流れ。3分50秒頃、GENはアッシュがボロボロになりながらも、なんとかダイブでレネクトンを倒す。さらに、カサディンがフラッシュでギリギリ生存、何とかダイブも耐えきるというスリリングな場面が続出。奇跡的に生き延びたことで、キルが入り、GENが優勢となった。
その後もFLYは諦めずにカサディンを狙うが、ギリギリでシールドが上がって耐えられたりと不幸が連続。逆にGENはスーパープレイでゴールド差を広げる。GENは敵をの攻勢をいなし続け、16分ごろにはミッドでPeyzが華麗なスキルドッジの末、トリプルキルを奪取した。
集中力を欠きはじめたFLYは、デスが嵩んでいく。不用意な足取りや、危ない場所でのリコールが祟り、北米スタイルのミスを犯してしまう。気づいたころには既にゴールド差は6000以上。22分ごろのファイトでは、その差と華麗なアグロピンポンで、GENが4‐0トレードを達成しバロンを獲得した。。
最終的に、1セット目の敗北で怒り心頭のGENは26分で14kゴールドの差をつけ、ネクサスを高速で破壊し試合を振り出しに戻した。
GENは1セット目の大敗はただの不調だったとでも言わんばかりに、FLYを完全に粉砕した。特にChovyは、ベイトプレイからチームファイトまで何もかもこなし、勝利を引き寄せた。通常ならばガリオなどの守備的なピックを選ぶところ、Chovyは「俺がキャリーする」と言わんばかりにカサディンを選び、見事に証明した。Peyzも序盤のレーニングフェーズから圧倒的な差を見せつけ、ボトムで大きなアドバンテージを得ていた。
一方でFLYは1セット目をすっかり忘れたように、1セット目のGENのように感情的に突っ込んでは破壊されてを繰り返した。特に再びヌヌ&ウィルンプのInspiredは、味方との連携を全く考えずに連続して突撃し、敗北の大きな要因となった。
ちなみに、この試合の結果、ラカンの12連勝は途絶えた。
GAME3
両チームとも無難なBAN/PICKを進めるかと思いきや、FLYは4ピックでアーゴット、5ピックでゼリを選んだ。
2分50秒頃、FLYのボットデュオをダイブしようとしたセジュアニ、エズリアル、ブラウムに対し、アーゴットがテレポートでバックアップに来た。その過程、アーゴットの体力が低くなったところで、Peyzの目が眩んでしまう。あろうことか前ブリンクした挙句アーゴットを落とし切れず、結局ラカンのノックアップによってFLYのカイ=サが2キルを取る。ここでゲームが大きく動いた。
そこから多くの小競り合いが勃発。致命傷に至るアクションは無かったものの、GENも不穏な流れを断ち切るべく仕掛けていた。KiinがBwipoのアーゴットをソロキルするシーンはあったが、Massuのカイサに4キルが集まっていた。
25分頃、互いにバックテレポートを使い、突如チームファイトが始まる。サイラスがアーゴットのウルトを奪い、Bwipoを処刑。ここでFLYの息の根を止めるべく、GENは追撃を選択するが、これが大事故を呼ぶ。相手ジャングル内の奥深くに入り込み追い立てるも、ギリギリ落とし切れず。FLYが見事な反転を見せ、4対1トレードの勝利、カイ=サが7/0/1のモンスターに成長してしまった。さらに、復活したアーゴットが自身のウルトでサイラスに復讐し、最終的に5対1の大損害。FLYはバロンも手に入れ、GENは勝ち目を放棄してしまった。
開いた金銭差は7000以上、しかしGENは諦めない。33分頃ドレイク前のチームファイトで激しい乱戦が展開。あわやMassuのカイサに届きかけるも、全力でレネクトンから守ったことで1‐1トレードに収めることに成功。ただ、ドレイクはGENの手に渡り3スタックへ。
ドレイクスタックで劣るFLYはここで終わらせるべく、バロンタッチ。Kiinが完璧な裏取りを見せるも、Busioが犠牲となって時間稼ぎ&Massuのゾーニャでやり過ごすことに成功。Quadの素晴らしいフラッシュ判断も重なり、4‐2トレードをFLYが達成し、バロンも獲得。1万ゴールドもの差をGENに叩きつける。自陣もボロボロになって前に出るしかなくなったGENに対して、Quadがクアドラキルを獲得し、FLYがマッチ勝利に大手をかけた。
GENは本当に勝つ気があるのか疑わしいほど、ひどいバンピックとボットの大不振を見せ、1セット目以上に惨敗。瞬く間に危機に陥ったのである。特にPeyzの最悪なパフォーマンスは、人々に強烈な印象を与えた。それだけでなく、GENは不利な状況にもかかわらず、呑気にゲームを展開し、FLYのゲーム運営よりも劣っていた。
FLYはサイラスに対抗してゼリをピックし、Chovyを抑え込むことに成功。冷静なプレイでカイサをノーデスで守り抜き、ゼリとカイサの2人の火力を最大限に発揮した。GENは必死にFLYのキャリー陣を狙ったが、立ちはだかる大きな壁に防がれ続けていた。特にBwipoが何度もミスをしたにもかかわらず、QuadのゼリとMasuのカイサが神がかったキャリーをしたことは言うまでもない。さらに、6つのグラブとドラゴンを譲ってでも、確実なタイミングで仕掛けるゲーム運営は完全に強豪のソレだった。
LCKの第2シードであるGENが、マイナーリーグと見なされていたLCSに敗れる危機が迫る。韓国コミュニティでは、残っていた笑いがすっかり消え失せた。GENのチーム全体の未来に危機に直面していると言えるだろう。一方、LCSのFLYにとっては、西洋の最後の希望となる絶好のチャンスが訪れている。事前の圧倒的な劣勢評価を考慮すると、すでに「FLYが勝った」との声さえ上がっている。
GAME4
GENは6年前のAFsのように、北米チーム相手にマッチポイントに追い込まれるという大きな危機に直面することになった。メンタル的にも揺らいでいるようで、入場する際に前の試合では見られたファンサービス(ファンとのハイタッチ)がなくなっていた。
ジョーカーであるセラフィーンと前の試合で脅威だったスカーナーをBANし、GENはCanyonのシグネチャー・ピックであるニダリーを再び選択した。FLYはレネクトンとニダリーのセットアップを渡したくないかのように、レネクトンをピック。両チームともに体力重視の無難なバンピックを行った。
試合序盤、ラカンがマップ全体を縦横無尽に駆け回り、ミッドとボットのフラッシュを一気に3つ奪っていく。7分頃、KiinはラカンのノックアップにWに合わせた後、Q3とRでエズリアルを引っ張りこむ。逃げようとするエズリアルを追撃し、1対2の状況でソロキルを達成するスーパープレイを見せた。
勢いに乗りたいGEN。しかし、9分頃、Chovyはメンタルが揺れていたのか、セジュアニのミッドガンクとオリアナのショックウェーブに反応できなかった。挙句フラッシュを無駄に使ってしまい、キルを献上してしまう。GENは10分20秒頃、ボットにいたレネクトンを4人でダイブしてぎりぎり倒し、挽回する。
ここからGENはレネクトンを潰しにかかる。オブジェクトのトレードを行う中、17分ごろにレネクトンに対して2度目のダイブを決行し、完遂。さらに、20分ごろには、正確なアローがレネクトンに命中し、Bwipoのスコアは0/3/0となってしまった。
4000ゴールド近い差をつけられたFLY。25分頃、レネクトンのバックテレポートでGENを挟み込もうとしたが、アッシュがレネクトンにまたしてもR。プランは崩れ集団戦で敗北し、バロンに向かわれる。止めに入ったプレイヤーは、逆にカサンテのバックテレポートでやられてしまい、バロンとともに大きなアドバンテージを渡してしまった。リアナも倒した。
10000ゴールド以上の差を埋めることは叶わず、最後の仕掛けもKiinのカサンテに止められ、4セット目をGENが勝利で締めくくった。これで、今回のWorldsで初めて「SilverScrapes」が流れることとなった。
GENはKiinのカサンテが大暴れ。ダメージでも2位、スーパープレイでGENの活路を開いた。また、Canyonのニダリーも十分に機能した。
FLYは序盤にGENのメンタルが揺れる隙をつき、ミッドとボットを狙ったが、トップとジャングルで大きな差がついてしまった。苦しむ間にトリスターナが少しずつキルを拾いながら成長し、残りのレーンも崩壊してしまった。
GAME5
こうして、2024年のワールドで初めてテレーレがアディダスアリーナに響き渡った。ただ、このセットで負けたとしても、FLYは予想以上の接戦を見せ、LCS版の2017年Misfitsとして賞賛されて退場することができるだろう。しかし、GENが敗北すれば、LOL史に残るとんでもない悲劇となるだろう。
猛威を振るったニダリーと前の試合のキーカードであったアッシュをバンされる。GENはバンピックの展開を予想通りに進める意図なのか、ヨネを開けアムムをバンする。Quadは挑戦を受け入れ、1ピック目でヨネを選択。これに対してGENはスカーナーを選択し、8連敗中のスモルダーを再びピックする。FLYはバンピックの流れを崩す意図で、Inspiredの得意チャンピオンであるフィドルスティックを選んだ。GENは驚くべきことに、GENはADCにジグスを選び、再びサマーファイナルの悪夢を再現した。そして、FLYがトップにセットをピックしたことで、バンピックは混沌としたまま続いた。
6分ごろ、GENはセトのフラッシュを引き出すために3人でガンクを試みたが、Bwipoが冷静に対応。7分に再度狙うも、セトは優れた動きでこれをかわし、結果的にフラッシュを引き出すだけに留まった。この分の有利もあり、再序盤のオブジェクトはFLYの手に渡る。
そこから試合は硬直し、動いたのは16分40秒頃。スモルダーとスカーナーがボットでヨネをダイブし、両チームのトップがテレポートで合流する。Qでのノックアップのために前に出過ぎたヨネが倒され、17分目に初めてのキルが発生した。
GENは極端に戦闘を避け、強引にテンポを遅らせる構え。FLYのフィドルスティックは早い段階でレベル6に到達し、強力なアルティメットで戦闘を開く準備をしていたが、結局何の成果も得られなかった。FLYは少しずつテンポを失い、戦闘を仕掛けることができず、GENは安全にゲームを進めていった。
このままではらちが明かないFLY。22分には、カリスタとフィドルスティックの強みを活かし、FLYが予想外のタイミングでバロンを隠れて狙う。しかし、Kiinが速やかに発見しイコライザーで対応。その後、GENは逆にバロンを確保し、集団戦も勝利。Chovyのスモルダーが最強になろうとしていた。
30分経過した時点で、6000ゴールド以上の差をつけていたFLY。最後のファイトではInspiredのすべてをかけたクロウストームを、Canyonがインペイルで無効化。Chovyが全てを溶かし切り、ゲームセットとなった。
スモルダーを中心としたGENは、自分たちが最も得意とする構成を選び、苦境から復活した。
熱戦を見せたFLYはここで敗退となった。
GENは期待を裏切り、良くない姿をみせてしまっただろう。なんとか、崖っぷちでGENが勝利を収め、2022年以来2年ぶりにワールドの4強に進出したGEN。5セット目の勝利が確定すると、Chovyはやっと笑顔を浮かべ、手が震える中で飲み物を口にする様子が映し出されていた。今回の苦境を機に、従来の堅牢なスタイルを取り戻さなければ、これまでずっと勝ち続けてきたT1にも勝てる見込みはないだろう。
FLYは惜しくも今日敗北したが、再び世界を驚かせるような印象的な実力を見せ、素晴らしい試合を展開した。FLYは観客からの大きな拍手と歓声を受けながら試合を終えた。多くの予想を覆し、1セット目で快勝し、3セット目でも勝利し、パワーランキング1位、優勝候補、MSIの勝者であるGENを相手にマッチポイントまで追い詰めた。ユニークなバンピックは驚きを与え、メジャーリージョン最弱と言われていたLCSの底力を、アメリカリーグ統合の最後の最後に見せつけてくれた。個々の活躍も素晴らしく、特にMasssuは東アジアの一流ADCたちと肩を並べる実力を見せ、なぜ2024年LCSの新人王に輝いたのかを証明していた。しいて問題をあげるとするのであればトップレーンの差だろう。なんどもキャッチされたBwipoに対して、Kiinは堅実なプレイを積み重ねていた。
これは余談だが、GENがFLYに3:2で勝利するだろうと予想していたFakerの慧眼が評価されている。Keriaも同様の発言をしており、TES戦で5セット目のジョーカーピックとしてフィドルをピック候補に挙げるなど、FLYがT1とのスクリムでかなり印象的なプレイを見せていたのではないかという推測が広がっている。